嘘つきな君
その名前を聞いた瞬間、ドクッと心臓が一度大きく跳ねる。
無意識に、グラスを持つ手に力が入った。
そんな私をじっと見つめる先輩の瞳。
キャンドルの淡いオレンジ色の灯りが、瞳の中で揺らいでいる。
「芹沢、さ」
息をするのも忘れてしまいそうな私に、表情を崩さないまま先輩が口を開いた。
微かに微笑む顔も、何故か笑っていないように見える。
ドクドクと心臓が鳴る中、徐々に汗ばむ手をギュッと握る。
そんな私の姿を見ながら、微かな沈黙の後、ゆっくりと先輩が口を開いた。
「大輔と、何かあった?」
微かなオブラートに包みながら告げられた言葉。
だけど、洞察力の鋭い先輩の事だ。
私の気持ちなんて、全部お見通しなんだろう。
だから、きっと。
今日誘ってくれたのも、これを聞きたかったから――。