嘘つきな君

詰め寄りながら顔を覗き込んだ私を見て、ふっと視線を下げた先輩。

そして、残り少なくなったお酒を口に運んで、背もたれに体を深く預けながら、どこか自嘲気に笑った。


「お喋りって、後でアイツに怒られるな」

「え?」


息の下で笑った先輩の言葉に首を傾げる。

そんな私に視線も向けずに、少し考え込むように口を閉ざしてしまった先輩。

それでも、どこか決心したように小さく息を吐いた後、視線だけ私に向けて口を開いた。


「アイツの生い立ちは聞いた事ある?」

「お兄さんがいて……でも、病気で亡くなったって」

「そ。そのお兄さんと大輔は、幼い頃、今の神谷グループ社長に引き取られたんだ」

「え?」


唐突に告げられた言葉に頭がついていかない。

目を丸くした私を見て、どこか遠くを見るような目で前を向いて先輩はグラスに口をつけた。


「経済界では有名な話。きっと、いつかは芹沢の耳にも入るだろ」

「引き取られたって……だったら、社長と常務は本当の親子じゃないんですか?」

「まぁ、そういう事になる」

「……という事は、養子ですか?」

「あぁ。でも血は繋がっている。それに、本当は現社長よりも、大輔や亡くなった兄貴の方が神谷グループの後継者に近かった」


その言葉に、首を傾げる。

待って、意味が分からない。

養子として引き取られたのに、血は繋がっている?

おまけに、その2人が世襲制で築き上げられた神谷グループの後継者に近かった?

いろんな事が矛盾している。




< 162 / 379 >

この作品をシェア

pagetop