嘘つきな君






「いつも、こんな遅くまで残ってるのか?」


カップに入れたコーヒーを、ソファーに座る私に差し出した彼がそう言う。

白い湯気がユラユラと揺れるそれを受け取りながら、小さく頷いた。


「仕事に没頭しちゃうと、いつの間にか――って事はしょっちゅうです」

「たいした集中力だな」


ふっと小さく笑ってから、所々に置かれた大きなスツールに腰を下ろした彼。

後ろに片手をついて、目の前に見える景色を見つめている。

それを追う様に、私も目線を彼から窓の外に向けた。


神谷ビル自慢の、東京の景色が一望できる、この展望台。

ビルの上層部にあるから、夜になると本当に綺麗に夜景が見える。

床から天井まで届く大きなガラスは、始めて見た時は感動してはしゃいだもんだ。


「神谷一族は、夜景が好きなんですか?」


ふと思った事を口にして、クスクスと笑う。

すると、隣に座っている彼が不思議そうに首を傾げた。


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