嘘つきな君
◇
「いつも、こんな遅くまで残ってるのか?」
カップに入れたコーヒーを、ソファーに座る私に差し出した彼がそう言う。
白い湯気がユラユラと揺れるそれを受け取りながら、小さく頷いた。
「仕事に没頭しちゃうと、いつの間にか――って事はしょっちゅうです」
「たいした集中力だな」
ふっと小さく笑ってから、所々に置かれた大きなスツールに腰を下ろした彼。
後ろに片手をついて、目の前に見える景色を見つめている。
それを追う様に、私も目線を彼から窓の外に向けた。
神谷ビル自慢の、東京の景色が一望できる、この展望台。
ビルの上層部にあるから、夜になると本当に綺麗に夜景が見える。
床から天井まで届く大きなガラスは、始めて見た時は感動してはしゃいだもんだ。
「神谷一族は、夜景が好きなんですか?」
ふと思った事を口にして、クスクスと笑う。
すると、隣に座っている彼が不思議そうに首を傾げた。