嘘つきな君

「だって常務と一緒の時は、だいたいと言っていい程、夜景が視線の先に――今だって」


そっと指を前に出して、宝石の様に輝く夜景を指さす。

そんな私の言葉を理解して、あぁと小さく言って笑った彼。

そして、片手に持っていたコーヒーに一度口を付けてから、言葉を紡いだ。


「俺の場合はたまたまだとしても、叔父さんは夜景が好きみたいだな」

「社長が?」

「あぁ。兄貴から聞いた話だと、ここに会社を建てる時に重視したのが、東京の夜景が一番綺麗に見える事。だったみたいだ」

「え~そんな理由で?」

「たまに何考えてるか分からない人だよ、あの人は」


そう言って、彼は柔らかい表情のまま一面に広がる東京の夜景を見て目を細めた。

私もそれを追うように、目の前に見える景色に目を細める。


遠くには、東京タワーも、スカイツリーも見える。

大木のように天に伸びるビルには、まだ煌々と明かりが点いている。

様々な方向に延びる道路には、車のライトが連なっている。


まるで、まがいもののように、美しい景色。

まるで、一枚の絵のように、美しい景色。


その景色を見て、思う。

きっとこの景色は、全てを手に入れた人間にしか手に入らないものだと。


日本を代表する一流企業、神谷ホールディングス。

その会社を代々受け継ぎ、その度に大きくしていった神谷一族は本当に凄いと思う。


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