嘘つきな君

その姿を見て、慌てて彼の隣の椅子に腰かける。

バタバタとバックの中からスケジュール帳を取り出して、頭を仕事モードに切り替える。

すると。


「芹沢」


不意に名前を呼ばれて、伏せていた瞳を持ち上げる。

その瞬間、突然降ってきた触れるだけのキス。

あまりにも突然の事で目が点になる。


「目覚まし」


そんな私を見て、悪戯っ子の様に不敵に笑った彼。

そして、ポカンとバカみたいに固まる私の髪をグシャグシャっと撫でた。

その瞬間、一気に顔が真っ赤になって、逃げるように俯いて視線を泳がせる。


「目、覚めたか」

「も……もう、とっくに覚めてますよ。それに、誰かに見られたらどうするんです!」

「見るも何も、人いないだろ」

「遠くの方に少しいます!」

「誰も見てねーよ」


恥ずかしさを紛らわす私を見て、クスクス笑う彼を見て頬を膨らます。

コロコロ変わる彼の表情に、毎回私は振り回されているんだ。

それでも。


「後で、もう一回して」


やっぱり、あなたの隣は居心地がいい。
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