嘘つきな君

「じょ、常務っ! 時間です! 行きましょうっ」

「何言ってんだ。まだ途中だろ」

「そんな事やってる場合じゃないですっ」

「パーティーなんて、遅れて行くぐらいが丁度いい」

「バカ言わないでくださいっ」


離れていった私に、酷くご機嫌斜めな様子の常務。

まるで玩具を取り上げられた子供の様に、不貞腐れて私を睨んでいる。

本当、たまに子供みたいなんだから。


小さく溜息を吐いて、慌てて身なりを整えながらチラリと常務を見る。

すると、艶めかしく濡れた唇を親指で拭っていた。

その姿を見て、思わずウッとなる。

なんで、こうも色っぽいんだ。

そんな私の視線に気づいた彼が、悪戯っ子の様に笑って私を見つめた。


「何?」

「なんでもありませんっ。行きますよっ」

「はいはい」


クスクスと笑いながら、どこか優雅に腰を上げた常務。

そして。


「――っ」


私の腰をグイッと引き寄せて、額にキスを落とした。

突然の事で真っ赤になる頬。

それでも、常務は至って普通に上着を乱暴に羽織って。


「続きは夜にだ」


そう言った。





――ほんと、私の心臓がもたないよ。
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