嘘つきな君
肩に頭を置いたまま、そっと彼を見上げる。

そんな私の視線に気づいた彼が、同じように私を見つめた。

そして。


「そんなに見つめられると、我慢できなくなるんだけど」


それでも、その言葉を聞いて思いっきり目を逸らしてしまった。

露骨なくらい。


「そんなつもりじゃっ」

「菜緒」

「――っ」

「キスしたい」


慌て言い訳をする私を余所に、彼は甘い言葉を落とす。

まるで誘う様に、甘い甘い言葉を。


そんな事言われたら、逆らえない。

こんな時に名前で呼ぶなんて、ズルイ。


恥ずかしさに唇を噛みしめながら、ゆっくりと顔を常務の方に向ける。

繋がれた手が熱を持って熱い。


「顔真っ赤」

「だってっ」

「だって?」

「そんな事言うから……」

「そんな事って?」

「――意地悪っ!!」


もう恥ずかしくて、顔から火が出そうだ。

真っ直ぐに私を見つめる、黒目がちな瞳に理性が飛びそうになる。

その瞳に見られただけで心臓が持たないのに、『キスしたい』だなんて、そんな。


茹でダコになりながら、膨れっ面をする私を見て、クスクスと笑う常務。

それでも。


「――んっ」


突然勢いよく体を引き寄せられ、迎える様に彼の唇に塞がれた。

柔らかい唇が、熱い舌が、何度も何度も角度を変えて触れ合う。
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