嘘つきな君
途端に、決壊したように涙が散る。
止めどなくハラハラと、まるで花が散る様に。
我慢していたものが、溢れる様に。
「でも……私、お金持ちでも、仕事が出来るわけでも、美人でもないよ」
それでも、素直じゃないのか、なんなのか。
口から出る言葉は、そんなもの。
すると、苦笑いを浮かべた彼が、ゆっくりと私を抱きしめた。
そして。
「素直に俺にさらわれろ。菜緒」
耳元でそう言った。
その言葉に、体中に電気が走る。
大好きな香りに包まれて、息も出来ない程胸が締め付けられた。
そしてその瞬間、持っていた航空券を離して彼の背中に手を回した。
「うぅ~……」
鳴き声を上げた私を見て、彼が息の下で笑って更に抱きしめる強さを強めた。
窒息しそうな腕の中で、必死に彼の背に掴まる。
もう涙が止めどなく流れていく。
ずっと、求めていた温かさがここにある。
ずっと、帰ってきたかった場所がここにある。
どれだけ強がっても、心の奥では忘れる事なんて出来なかった。
思い出を消して、彼を消して、そうやって生きていく事なんて出来ないと分かっていた。
それほど、彼を愛していた。
どれだけ酷い事を言われても、それでも――。
「これは……嘘じゃないよね?」
「――あぁ」
「もう、離れなくていいの?」
「あぁ」
ぎゅっと彼を抱きしめて、震える声で問う。
それに返ってくる腕の強さに、また涙が流れた。