嘘つきな君
「待て待て。とりあえず落ち着いてくれ。今から話すから」
まるで幼稚園の先生状態になった部長が、両手を胸の前で広げて群がる部下達を後ろに下げる。
その姿に、社員達は渋々口を噤んだ。
どこか愛嬌のある部長は、昔から上司というよりは親戚のおじさんって感じだった。
猛烈に失礼だけど。
部長の言葉を聞いて、まだまだ不満そうな顔をしていた社員達だけど、一呼吸置いて一歩後ろに下がった。
その様子を一度見渡した部長が、大きく息を吸った。
「みんなも知っての通り、我が社は事実上、無期限の営業停止命令を受けた」
「――」
「職を失った」
伏し目がちにそう言った部長の言葉を聞いて、思わずぐっと拳を握る。
それと同時に、部長も『被害者』なのだと分かった。
だけど、納得できない。
必死に働いてきた私達への仕打ちがこれ?
朝早くから夜遅くまで働いてきたのに、奪ったのは一度しか会ったことのない社長。
噂では重役連中もグルだったって話。
そんなの、納得できない。
みんなも同じ事を思っているのか、唇を噛みしめて、じっと部長の姿を見ていた。
そんな私達の顔を見つめ返す部長。
そして。
「だが、捨てる神もいれば、拾う神もいる」
張りつめた空気を打破する様に、目を細めて笑顔を作った。