嘘つきな君
今にも倒れてしまいそうな部長を見て、哀れに思う。
ふと隣に視線を向けると、困った様な顔の美鈴と目が合って苦笑いを溢す。
すると。
「か、神谷ホールディングスが今後うちの会社の舵を取る!! 仕事は以前のままだっ」
「――」
「君達も、以前のままだっ」
「――」
「来週からでも、仕事を再開してほしい!」
揉みくちゃにされる中、部長が大声で天井に向かってそう叫んだ。
その瞬間、ぎゃーぎゃーと騒がしかった社員達が一瞬にして静かになった。
そして。
「やったぁぁぁ――――っ!!」
爆発した様に声が弾けた。
「え? え? じゃぁ、私達ニートじゃなくなるのっ!?」
「職安行かなくていいのっ!?」
徐々に部長の言葉の意味を理解して、無意識に頬が上がる。
隣にいた美鈴と手を握り合って、現実を確認し合って、その場で飛び跳ねた。
仕事もこのままで、私達もこのままって事は、そういう事だよね!?
また、働けるって事だよね!?
ここで、このメンバーで働けるって事だよね!?
「私達無職じゃないんだよ!! やったね菜緒!!」
「うん!! それに神谷ホールディングスなんて、超一流企業じゃん!!」
よくよく考えれば、神谷ホールディングスなんて日本の企業で三本の指に入る超一流企業じゃない!!
そんな会社の傘下に入るなんて、玉の輿みたいなものじゃない!
部長の言う通り、本当に神様だよ!