嘘つきな君
その姿に反抗するように、プイっとそっぽを向く。


「誰があんな悪魔」

「あ~まだ根に持ってるの? 転んだのに手を差し出してくれなかった事」

「根に持ってるのはそこじゃなくて、私が言ってるのは、アイツの言動全てよっ。どんだけ俺様なわけ!?」

「いいじゃない。あんたMなんだから」

「そういう問題じゃないっ!!」


意地悪そうな顔でそう言うもんだから、思わず掴みかかりそうになる。

どうして全部そういった恋関係に繋げようとするかな!


本当に恋愛感情とかそんなんじゃない。

だけど、何故か目が離せないというか、彼の事をもっと知りたいと思う自分がいる。

それに、新しい表情を見る度に、どこか嬉しくなる。

それが、私にだけ受けられていると分かると、どうしようもなく。


「だったら、菜緒のそれは探究心よ。神谷さんって何かと不思議なオーラ出してるじゃない? ミステリアスの塊よ」

「まぁね~」

「あんな役職についてたり、性格の人って周りにはいないじゃない? だから気になるのよ」

「そうなのかなぁ。でも、なかなか素は出してくれないんだよね。というか、どれが素なのか分からない」

「大企業のトップなんて敵が多いからね。相当心を許した相手じゃないと、素なんて見せないでしょ」


仁美の言葉を聞いて、同意する様に小さく頷いた。

確かに立場上、常務の『仮面』をかぶらなければいけないのは理解できる。

それほど、神谷ホールディングスは大きな会社だから。

初めて会った夜が彼の素だと思っていたけど、一緒に仕事をしていくうちに、どっちが本当の彼なのか分からなくなった。


意地悪で悪魔みたいな顔が素顔なのか。

真面目で熱心な姿が、本当の彼なのか。

それとも、どっちも作られた神谷大輔なのか。


そう思ったのには理由がある。

一緒に仕事をしている時に感じる、僅かな違和感。

不意に見せる、どこか寂しそうな顔。

思いつめたように、ボーっとしている時がある。

それは、意地悪な彼でも、常務な彼でもない。
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