嘘つきな君
不器用ながらも、そんな常務の優しさが嬉しくて、思わずジャスミンの香りがするスーツをギュッと握る。

それでも、素直じゃない私は嬉しさを隠して同じように素っ気無く言葉を落とした。


「ありがとうございます」


それでも、彼から視線を外した瞬間、無意識に上がる頬。

胸の奥がポカポカして暖かい。


どうしてだろう。

こんなに、嬉しいには。

こんなに、心が温かくなるのは。


意地悪で悪魔みたいだと思っていた神谷常務だけど。

もしかすると、本当は優しい人なのかもしれない。

ただ感情表現とか、言葉が足りないだけで。

勘違いしているだけかもしれない。


「もう少し寝てろ」

「いや、でも」

「上司命令だ。寝てろ」


資料を取り出そうとした私に釘を刺すように、強めの口調でそう言う常務。

だけど、その言葉は私の事を想ってくれたもので、その一つ一つが私の胸を温かくする。

だから。


「じゃぁ、あと10分だけ」


真剣な顔で資料に目を通す常務に一度微笑みかけてから。

素直にジャスミンの香りに埋もれる事にした。



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