初恋の人
「お父さん、お母さん。これからですよ。」

「そうですよ。私達のところもまだなんですから。」

私達もそう言って、お互い笑っていましたが、詩野さんが弟さんに子供ができて、羨ましいと思っているのは、目に見えて分かっていました。


ある日、昼下がりの頃。

紳太郎さんと一緒にお茶を飲んでいた時でした。

「あなたも大変ね。詩野さんの弟さんに子供が生まれたら、比較されてしまうでしょう。」

「僕のところは、何ともありません。」

紳太郎さんは、子供ができるのもできないのも、自分には関係ないと言うような表情でした。

「いいわね。あなたのところは。」

相手が紳太郎さんだからでしょうか。

つい、愚痴を溢してしまいました。

「義姉さんのところは、何か言われているのですか?」

「倫太郎さんは、何も言って来ないわ。ただ……」

「周りが言ってくるんですね。」


そう。

いつもは身の回りの事を、あれこれ手助けしてくれる使用人の人達が、私達長男夫婦に子供ができない事を、密かに私のせいにしている事を、私は知っていました。


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