初恋の人
この前、詩野さんのご両親が訪ねて来られた時の事でした。

「そう言えば詩野。良一にね、子供ができたんだよ。」

「良一に?」

良一さんと言うのは、詩野さんの弟さんでした。

「嬉しい。私、来年には叔母さんになるのね。」

初めての甥ができる事に、詩野さんは喜んでいるようでした。


その時、詩野さんのお母様が、こんな事を言ったんです。

「ところで詩野のところはどうなの?」

「私達?」

「嫌ね。子供の事よ。」

詩野さんは、ちらっと紳太郎さんの方を見ました。

「紳太郎さんだって、そろそろ子供が欲しい頃でしょうに。」

詩野さんのお父さんとお母さんは、そう言って微笑んでいました。

「すみません。僕が不甲斐ないばかりに。」

「いいえ。詩野が悪いんですよ。」

なかなか子供ができないのは、私達も一緒でしたから、詩野さんの気持ちも、紳太郎さんの気持ちも手に取るように分かりました。

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