初恋の人
そして、紳太郎さんが戻ってから、詩野さんと彼は益々、仲が良くなった気がしました。

「紳太郎達、最近になってようやく、夫婦らしくなってきたな。」

寝る前に、私が髪を梳いているいる時に、夫が煙草をふかしながら言いました。

「あなたも、そう思います?」


床につく、ほんの一時の間。

いつの間にかこの時間が、私と夫の、唯一二人でいる時になっていました。


「昔は夫婦と言うよりは、幼い恋人同士みたいな、感じだったのにな。」

「それもそれで、可愛らしかったわ。」

私が髪を梳き終わって、深雪さんに届けてもらった洗濯物を、片付け始めました。

「そう言えば、結婚する前は、綾女との仲もそんな感じだった。」

私は一瞬、手を止めました。

「そう、でしたわね。」


夫に見初められて、結婚するまでの期間。

私達は同じ病院で働きながら、よく人の目を盗んで、二人で会っていた事を、思い出しました。



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