初恋の人
「秘密なんてないわ。事実だもの。」

私が紳太郎さんに背中を向け、戸を閉めようとすると、彼はそっと私の手に触れました。

「強いなあ、あなたは。」

「私は……強くないわ。」

紳太郎さんは、何かを決心したように、大きなため息をつきました。


「いいえ、強いですよ。強くなければ、こんな大きな家を守れるはずがない。」

彼は私を引き寄せると、私のまぶたに口づけをしました。

「おやすみなさい……義姉さん。」


それは、私たちを姉弟に戻す呪文。

そして、それが私達の別れの時でした。
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