ロマンスがありあまる
彼に対しては悪い印象しか抱いていなかった。

年下のくせに、どら息子のくせに、ものすごく強引で…しかも、今日初めて会った私を婚約者にするとまで言い出した。

嫌いだった。

それはもう、大嫌いだった。

だけど…意外にも男らしいところとか面倒見がいいところとか責任感が強いところとか、彼の一面を知るたびに好きになってしまっている自分がいた。

我ながら単純な自分に呆れてしまったけれど、好きになってしまったら…それはもう、仕方がないよね?

そして、専務と本当に婚約して今に至る…と言う訳である。

そう思いながら私は仕事を切りあげると、パソコンの電源を切った。

「それじゃあ、お先に失礼します」

そう言って椅子から腰をあげた私に、
「はい、お疲れ様でした」

亀田さんは笑顔で返事をしてくれたのだった。
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