ロマンスがありあまる
「お疲れ様です、専務」

そう声をかけた私に、
「この前、言ったじゃん」

専務は呆れたように言い返した。

「もう結婚するんだから、いつまでも僕のことを専務と呼ぶのはやめてくれ…って言ったじゃん」

専務は続けて言った。

「ここは会社ですよ」

そう言い返した私に、
「僕らの婚約のことはもう全社員が知っているんだ。

今さら恥ずかしがる必要なんてないと思う」

専務はさらに言い返したのだった。

1年たった今でも彼に打ち負かされている状態である。

悲しいことに、これが現実だ。

私は深呼吸をすると、専務の顔をじっと見つめた。

閉じていた唇を開いて、彼のために音を発する準備をする。

「――国光さん」
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