次期社長の溺愛が凄すぎます!
「何をしてるんだ、麻衣子?」

藤宮さんは訝しいような、不思議そうな複雑な表情のまま、私に近づいてくる。

何って、一応はあなたを迎えに来たわけなんだけど。

「えーと……」

「何度声をかけても無視して、素通りしていくから驚いた」

そりゃあ驚くね! 迎えに来ているはずの人が、声もかけてるのに目の前を素通りして行くとか、めちゃめちゃシュールだったよね!

てか、見られていたとか、かなりの勢いで恥ずかしいんですが!

「ちょ……ちょっと、考えことをしていたんです」

藤宮さんは目の前まで来て立ち止まると、小さく笑った。

「そのようだな。赤い顔が可愛い」

言いながら、手の甲を使って私の頬を撫で上げる。

「迎えに来てもらうのは、やっぱり嬉しいな」

いや、迎えに来られたのは私のような気がしないでもないんだけど。

「は、早いですね。荷物を取りに行ったりとかはしなかったんですか?」

見てみると、藤宮さんはレザータイプのアタッシュケースを持っているだけだし、末松さんも似たようなものだ。

「向こうから送った。荷物を持ち帰らなくては気がすまない質ではないからな」

微笑む藤宮さんを瞬きして見上げた。

まぁ、荷物は絶対に持ち帰らないと気がすまないっていうか、持ち帰るもんだと認識していたよ。

そうか。送ることももちろんできるよね。
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