次期社長の溺愛が凄すぎます!
だって、状況がわからないから、いろいろ考えてしまう。

父さんに何かがあったら、やっぱりどうしようかって思う。

和志は“半人前”なんて言っていたけど、工場のおじさんたちからすると“まだまだひよっこ”なんだろうし。

事務的なことは母さんが頑張ってるから……とは言っても、実際は父さんが工場をまわしているのは間違いない。

万一なんて考えたくないけど、万一のことも考えないといけないし。

跡継ぎじゃないからって、私は全然畑違いな会社員勤めをやっていて。

長女だから、ここはしっかりしなくちゃって思うけど、何をすればいいのかもわからない。

それに、ぐうたらな父さんだけど、いなくなっちゃうとか、あり得ない!

頭の中で“どうしたらいいんだろう”という言葉がぐるぐる回るだけで答えなんてなくて。

エレベーターの扉が開いて、藤宮さんに手を引かれるままに降りる。

そのまま動けずにいたら、彼が私の手の甲を親指で撫でた。

「手が冷たいな」

小さく呟かれて、繋がれた手を見下ろす。

藤宮さんの手はあたたかい。心地よい温もりが優しくて、意味もなく泣きそうになってしまう。

「今は黙って俺に支えられてろ。まずは先に安否確認だろ?」

「はい……」

「確認してから、状況をみて盛大に取り乱せ。危なかったら俺がどうにかしてやる」
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