次期社長の溺愛が凄すぎます!
ううん。別に襲ってほしいわけじゃないんだけど。

そんなことになるのはとても困るけど、妙齢の女性としては、めちゃめちゃ複雑な気持ちになる。

俯いて無言になったら、頭上から盛大な溜め息が聞こえた。

「それは麻衣子の認識不足だ」

座りなおして藤宮さんを見上げると、どこか怒ったような、すねたような難しい表情をしている。

「惚れた女が隣の部屋で寝ていて、手を出さない男はバカだが、酔って前後不覚な女を抱く男は救いようがない」

つまり藤宮さんはバカな紳士だったらしい。

ポカンとしていると、藤宮さんはベッドの前に膝をついて目線を合わせてきた。

「さすがに麻衣子の初めてを、意識不明のまま強奪するわけにいかないだろう。それくらいは俺でも待てる」

あ、あなたは真剣な顔で何を言ってるのー!

目を瞠って固まっていたら、藤宮さんの手が伸びて来てビクっと身を竦めた。

「……大丈夫だから」

伸びてきた指先が軽く頬に触れ、乱れていたらしい髪を耳にかけられる。

「うん。やはり目が凄いことになってるな」

何故か微笑ましいもののように、慈愛に満ちた笑顔を向けられて瞬きする。

そういえば、なんだか目が開ききっていないような気が。

大泣きしたせいで、目が腫れているのかもしれない。

「頭が痛い以外、何か不調はあるか?」

「いいえ、特には……」
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