次期社長の溺愛が凄すぎます!
「君に連絡しようとして、吉田さんに説教されて、会うのを止められて、しばらくして一人で考える時間ができてから気がついたんだ」

気がついたって、いったい何に?

ゆっくりと振り向くと、けっこうな至近距離に少し困ったような藤宮さんの顔が見える。そして目が合うと、眉がしょぼんと下がった。

「前を向いていてほしいかな」

素直に前を向くと、頭上から溜め息が聞こえる。

「情けない話、あの時の俺は、自分の婚約者にも腹をたてていたが、君みたいな女性と付き合っていながら、別の女性と関係を持つような男にも、かなり腹をたてて頭に血がのぼっていたんだ」

「藤宮さんが? 確かに冷静じゃなかったかもしれませんけど、そんなに頭に血がのぼっていたようにも見えませんでしたが」

「表面を取り繕うのは習性なんだ。あの時は隠すのに必死だったと告白しておく。だから、後になって気がついたんだ」

それは、何をですか?

「あの夜、君に一目惚れしたんだ」

声に出さなかった疑問符は、何も言わなくても伝わったらしい。

返ってきた答えに、薄々は気がついていたけれど、それは聞き流そうとしていた言葉。

「過剰に相手の男に腹をたてたのも、君が他の男を思って涙を流すのが許せなかったんだ」

でも、藤宮さんは低い声でゆっくりと言い募る。
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