続*もう一度君にキスしたかった


揶揄い口調ではない、間宮さんの声はなんだかとても不思議な声に聞こえた。
言葉がさらりと耳から頭の中に入り込み、胸の中にすとんと落ち着く。


意味を理解するたびに、深く噛み締め胸の奥が温かくなった。


……大事にされているのだ。
そう、私はとても、彼に大事にされている。


私が仕事が好きなことをちゃんと理解してくれていて、仕事とプライベートの境がわからなくなるくらいに気を遣ってくれて心配してくれて。


仕事を奪っちゃいけないと、躊躇うくらいに大事にされている。
わかってはいたけれど、他人に指摘されて余計にそれが身に染みてくる。


「そんだけ大事にされてるんだったら心配ないんじゃないの。吉住さんが仕事を選んだところで壊れる関係でもないならとことん突き進むのもよし、折れるのもよし。結婚しないカップル、しても子供は作らないカップルだってたくさんいるし、おふたりさんが納得していられるならそれで。だから俺と話すよりその男といくらでも話し合って……っておい顔すげー真っ赤だな聞いてんの?」

「ええっ」

「後半聞いてねーだろ、折角良いこと言ってやったのに」


呆れた顔で指摘されて、頬に手をやれば熱かった。
だって、すごくすごく、愛されてるのだなと思ったら居ても立ってもいられなくなってしまったのだ。


朝比奈さんに会いたい。
って、会ってるんだけど、まだ仕事の話終わらないのかな。


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