続*もう一度君にキスしたかった

「えええ……」


腕の中でわんわんと泣く翔くんを、よいしょと抱き上げて立ち上がる。
朝比奈さんは泣かせてしまった手前、どうにかしようと思うのだろう。


「何かジュースでも買ってこようか、販売機がある」


目が真剣に、物でご機嫌を取ろうと考えている。
きょろっと見渡せば、キッズコーナーの隅に確かに、可愛いキャラクターの描かれたジュースの販売機があった。


「や、でも飲ませていいかどうか、パパに聞いてみないとわからないですし」

「そうか、じゃあやっぱり彼のところに」

「あ! そこにベビーカーがあるんです、一緒に」

「わあああああん!」


話している間にも大泣きしてそれどころじゃない。
ふたりあたふたとしながら、キッズコーナーからの脱出を試みる。


「真帆、待って靴が」

「いゃあああんわああああ」


脱げてしまった靴を履かせようとしただけで、いやだと泣かれた朝比奈さんはいよいよ困った顔をしていた。


これほどに彼の動揺した表情を見たことはなかった、多分今回が一番じゃないかと思う。


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