続*もう一度君にキスしたかった





『この時期に別れるの多いけど今回は大丈夫そうねー』


と、カナちゃんから茶化された。
実際に過去私たちが別れたのも、このイベントが畳み掛ける繁忙期の、最後の方だった。


私たちには明確な原因があったけど、それだけでなく疲弊したり余裕をなくしたり、そんな要素も加わったのは否定しきれない。


が、今回はただただ仕事に追われ忙しいのはその通りだが、仕事に集中できたのは朝比奈さんとの関係に何の不安も感じなかったからだと思う。
そう仕向けてくれているのが朝比奈さんだということにもちゃんと気付いている。


クリスマス、年末年始が過ぎ、バレンタインとホワイトデーは忙しいながらに互いに用意して贈り合い、三月末の朝比奈さんの誕生日には、久しぶりにデートをしてゆっくりとした時間を過ごした。



その頃、実際もう荷物を取りに帰る程度にしかアパートにいなかった私。
だって、忙しい時期、朝比奈さんが迎えに来てくれたら必然的に彼のマンションに行く形になる。


アパートまで送って、といえばきっと送ってくれただろうけど、朝比奈さんの手間を増やすことになる。
全く、同棲と変わらない状況に、彼が言った。


「真帆、今の状況じゃもう一緒に住んでるのと何も変わらないよ。家賃も光熱費も勿体ないからうちに越しておいで」

「うん……お願いします」


彼の言い分はもっともで、私はこっくりと素直に頷いた。
すると朝比奈さんは、なんともいえないくらいに柔らかく、嬉しそうに笑った。


「良かった。一番の誕生日プレゼントだよ」


もちろん、ちゃんとプレゼントのキーケースも渡したけれど、どちらも同じくらいに喜んでくれた。

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