続*もう一度君にキスしたかった

「一泊するだけなのに、贅沢じゃないですか?」

「今日はそういうことは考えなくていいの」


斜め後ろから寄り添う彼を振り向くと、キスが額と頬に触れる。
それから、しっとりと唇を重ねた。

アルコールの香りがする。
唇を合わせたまま、彼がふっと笑った。


「……真帆、酔っぱらってない?」

「大丈夫、しっかりしてますよ」

「首筋まで真っ赤になってる」


由基さんは相変わらず、少しも顔色は変わらない。


とくとくとく、と心臓の音が早いのは、アルコールのせいもある。
だけどそれだけでもきっとなく、私の目を見つめる彼の目がとても優しくて、それでいて真剣なせい。


「真帆」


どくん。
と、大きくひとつ跳ねて、返事の声が出なかった。


彼が少し身体を離し、向い合うように私を立たせる。
その間、ずっと私は彼の目を見ていて、両手を大きな手に包まれて自分の手の中に四角い箱を握らされた。


そこで初めて、視線を落とす。


「開けてみて」


言われるままに、四角い箱を開ける。
中には、緩い曲線を描いたリングが置かれていた。


中央には、大きな石と小さな石がふたつ、寄り添うように輝いている。

< 162 / 166 >

この作品をシェア

pagetop