続*もう一度君にキスしたかった
「一泊するだけなのに、贅沢じゃないですか?」
「今日はそういうことは考えなくていいの」
斜め後ろから寄り添う彼を振り向くと、キスが額と頬に触れる。
それから、しっとりと唇を重ねた。
アルコールの香りがする。
唇を合わせたまま、彼がふっと笑った。
「……真帆、酔っぱらってない?」
「大丈夫、しっかりしてますよ」
「首筋まで真っ赤になってる」
由基さんは相変わらず、少しも顔色は変わらない。
とくとくとく、と心臓の音が早いのは、アルコールのせいもある。
だけどそれだけでもきっとなく、私の目を見つめる彼の目がとても優しくて、それでいて真剣なせい。
「真帆」
どくん。
と、大きくひとつ跳ねて、返事の声が出なかった。
彼が少し身体を離し、向い合うように私を立たせる。
その間、ずっと私は彼の目を見ていて、両手を大きな手に包まれて自分の手の中に四角い箱を握らされた。
そこで初めて、視線を落とす。
「開けてみて」
言われるままに、四角い箱を開ける。
中には、緩い曲線を描いたリングが置かれていた。
中央には、大きな石と小さな石がふたつ、寄り添うように輝いている。