続*もう一度君にキスしたかった


ぱっ、と画面が明るくなったのは、私のではなく朝比奈さんのスマホだった。


意図せずして目に飛び込んで来たのは、メッセージアプリの四角い着信画面に『木藤』という見慣れない苗字だ。


その下に続いたメッセージに、目が釘付けになる。


『早朝にごめんね。次はいつ大阪に?』


寝起きで思考回路の鈍った頭が、そのメッセージを見た途端に巻き起こった嫌な感情に無理矢理叩き起こされる。


木藤、だけでは男か女かわからない。
だけど文章とピンクの花の画像のアイコンで女だと確信する。


眠気で目の焦点が合いづらく、ごしごしと手でこすった。


「あっ」


その間に、ぱっと画面は真っ暗になってしまう。
もう一度見ようと、ほぼ無意識にスマホの画面に指先を伸ばした。


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