続*もう一度君にキスしたかった

こんな早朝に着信が鳴ることがやはり珍しかったのか、朝比奈さんがフライパンを手に持ったまま私の方を見た。


「誰だろう。会社?」

「わからないけど、木藤さんて人でした。ごめんなさいちょっと見えちゃって」

「木藤さん?」


スマホはテーブルに置いてシャワーを浴びにいこうかと思っていたのだが、朝比奈さんの様子が着信の内容を気にしているように見えたのでそのまま彼の元まで行き差し出した。


彼はフライパンを置いてスマホを受け取ると、すいすいっと指を滑らせ操作する。
四角いお皿二枚に、ベーコンエッグが乗せられていた。


「十月辺りにもう一度行くって、言ったんだけどな」


メッセージを確認したらしい彼が苦笑いで首を傾げた。


「大阪支社の人?」

「そう。一年先輩で、大学も同じだった。今はマネージャーは離れて販売員の教育についてるから、あんまり関わりはないんだけどね。こないだ久々に会ったから」


やっぱり、会社の人だった。
大学からの知り合いで先輩なら、あの砕けた印象も頷けた。

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