続*もう一度君にキスしたかった
顎に大きな手があてがわれたかと思えば、上向かされて唇が塞がれた。
しかも軽いものじゃない。
「ん! んんんっ」
驚いている間にするりと入り込んだ舌が、ぐるりと中を一周し大きく口を開かされる。
逃げる舌先を絡め取られて擽られると、身体の力が抜けそうになって慌てて彼の背に手を回ししがみついた。
その手も握力があやしくて、彼の手に支えられているようなものだった。
こんなの、オフィスでするようなキスじゃない。
いや、濃いかろうが軽かろうが、キスはするものじゃない?
「ふ、んん、」
甘い吐息が鼻を抜ける。
抵抗もままならない私に気づくと、キスは強引さを抑えてしっとりと、味わうような柔らかなものに変わった。
唇の柔らかさを確かめるように甘く噛み、舐める。
歯列を辿って、唇の端を擽られ。
「ま、待って、口紅が、」
「そんな派手な色してないでしょう。取れても大丈夫だよ」
少し離して抗議をしたが、効果なし。
彼の視線が下を向いて私の唇を確かめれば……。
「そのままでも充分紅い」
顎に添えた手の指が、私の唇に触れ下に引く。
それに促されて開いた唇に、また彼の舌が這う。
あ、だめ。
これ以上は、足が立たなく……。
とろん、と意識まで溶けそうになった時、真後ろでノックの音がした。