続*もう一度君にキスしたかった
なんでそんなことになったんだろう。
多分、私が電話したあの時が、事故の直後ぐらいだったんじゃないだろうかと予測する。
あんな夕方から、イベント会場の視察に行っていたのか。
仕事を急いだりした?
私が、早く帰って来てなんて言ったから?
動揺して悪いことばかり頭に浮かんで、考えても仕方ない後悔に捉われる。
今は病院だから携帯の電源を落としているんだろう。
なんとか朝比奈さん本人と連絡が取りたくてメッセージを送ってみたけれど、既読は付かないまま、大阪に着いたのは夜十時を過ぎていた。
途中、笹木さんから再び連絡があり、新大阪まで迎えに来てくれていて迷わずに済んだので正直助かったけれど。
「申し訳ありません、遅い時間に」
「いえ、僕ももう一度病院へ向かおうと思ってたので……それに、すみません僕の説明不足で」
笹木さんは、私と同じ年くらいだろうか。
細身で眼鏡をかけた人の良さそうな男性で、なぜか私に平身低頭だった。
「朝比奈さんに、心配する人がいるから連絡を入れてくれと頼まれて……慌てて来させたら危ないから心配させないように説明してくれと言われてたのに、ほんとすみません」
朝比奈さんは、怪我をしたのが頭だったから出血が多かったのと、念のためMRIなどの検査を受けなければいけないからその為の入院だそうで、然程心配はなさそうだと言う。
それを聞いて、改札を出たばかりの構内で私はへたり込みそうなほどにほっと力が抜けた。