続*もう一度君にキスしたかった


お構いなしに続く会話に、看護師が来たとでも思われているのかもしれない。


「ホテルの鍵預けてくれれば必要なもの取りに行ったのに……」


そう言った、恐らく木藤さんの言葉が頭に残る。
強引なところがある、と朝比奈さんから聞いたけど、確かにそんな印象を受ける会話だった。


カーテンの横を過ぎて姿を見せた笹木さんにやっと会話は中断され、朝比奈さんの声が向けられた。


「笹木? どうしたの、何か……」


笹木さんの背中越しに、待ちきれなくて私がひょいっと顔を出すと、朝比奈さんの目が大きく見開かれた。


「真帆?」


やっと朝比奈さんの顔が見られて、込み上げてくるものがある。
額から頭部にかけて斜めに包帯を巻かれ、髪の乱れた姿を見てしまえば我慢できなくなった。


「朝比奈さんっ」


笹木さんを追い越してベッドに駆け寄る。
彼は驚きながらも、私が伸ばした手を迎え入れるように捕まえてくれた。


< 65 / 166 >

この作品をシェア

pagetop