続*もう一度君にキスしたかった
表情はいつもどおりで、声もしっかりしているけれど、本当に大丈夫なのか。
血の付いた髪に手を伸ばす、私の表情は青ざめていたのかもしれない。
彼が安心させるように微笑んで、私の頬を大きな手で撫でた。
「大した怪我じゃないんだ、本当に」
「でも、血が」
「頭だからね、出血が無駄に多かっただけだよ」
「本当に? 検査はちゃんとしてもらったんだよね?」
頭は打ってから後で急に容体が変わることがある、とか。
聞きかじっただけの僅かな知識に、不安が煽られ彼の怪我の状態にばかり気がいって、他のことに全く気遣えていなかった。
「本当に。明日か明後日には退院できるよ」
「朝比奈くん」
斜め後ろから聞こえた声に、はっと我に返った。