続*もう一度君にキスしたかった


きちんと向き直って頭を下げようとしたのだが、腕が朝比奈さんにしっかりと掴まっていて完全には向き直れない。


「待って、木藤さん。色々ありがとうございました。遅いから笹木に送ってもらって」

「大丈夫よ、駅はすぐそこだし。じゃあね」


朝比奈さんの制止も聞かず、彼女は颯爽と病室を出て行く。


「笹木、悪いけど木藤さん追いかけて引き留めておいてくれないか。真帆も僕のホテルに送ってやって欲しいから」


続いた朝比奈さんの言葉に、私は自分が今日泊まるところすら考えていなかったことに気が付いた。


「わかりました、ロビーで待ってます」

「今日はありがとう。色々と連絡とってくれて助かった」


笹木さんは、ちょっと驚いたように目を見開いたけれど、次には破顔して急いで木藤さんの後を追いかけて行った。


「朝比奈さん、私……」

「心配かけてごめん」


ぎゅっ、といきなり抱き寄せられて、堪えてた涙が溢れそうになった。


だって、本当に怖かった。
今もまだ怖い、本当に大丈夫なんだろうか、検査結果を聞くまでは安心なんて出来そうにない。
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