続*もう一度君にキスしたかった
私も彼の肩に手を回そうとして、何か不自然なことに気がついた。
私を抱き締める腕が片方、あまり力が入っていない。
回した手に伝わる感触で、布越しに身体にも何か巻かれているとわかった。
「ここも怪我してるの?」
「ただの打撲だよ」
「怪我だらけじゃない、もう……」
そこに負担をかけないように、そっと抱きしめ返す。
本当に、生きた心地がしなかった。
温もりを感じてやっと、気持ちが落ち着いて来たけれど……。
笹木さんに私のことも頼んだ、ということは、それほどゆっくりはいられないということだ。
今来たところだし、もう少し居たいという気持ちがどうしても先に立つ。
だが、朝比奈さんは怪我をした直後だし、病院の面会時間はとっくに過ぎている。
もう帰った方が迷惑にならないのは、その通りだと頭ではよくわかっていた。
「真帆、今日は僕の部屋に泊まって」
朝比奈さんが、片手をベッドの枕元に置かれていたビジネスバッグを引き寄せる。
中からホテルの鍵を取り出し、それを私の手のひらの上に乗せた。