続*もう一度君にキスしたかった


朝比奈さんが泊まっている部屋は、多少、雑然としてはいるけれど散らかっているというほどでもなかった。
キャリーバッグに大抵のものは詰めてあって、怪我さえしなければ翌朝すぐにでも帰ろうと思ってくれていたのだろう、と伝わって、嬉しくなった。


信頼、という言葉の難しさを、知っている。
口にするのは容易いけれど、実践するのはとても難しい。


信頼する側にも、される側にも努力が必要なのだと身をもって知っている。


私に預けてくれた鍵とカード
「真帆にしか頼めない」という言葉。


『僕には、真帆だけ』


と、暗に示してくれた。


それがとても嬉しくて、考えれば考えるほど、じんわりと胸に来て少し涙が零れた。


信じたい、信じて欲しい。
どんな些細なことでもいい、一方通行ではないと知ることが、信頼を強くする。






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