釣り合わない!!~溺愛コンプレックス~
仕方なく、一度、従業員を集めての会議も開いてみたけれど、誰一人として意見を言った者はいなかった。
「折角皆が力を合わせて作り上げたものでも、売る人間が力を発揮できてないんじゃあ・・・」
報告書はまだ真っ白のまま。
アドバイザーがいてくれたなら・・・などと考えてしまう。
:てかさ、店舗の経験がない私に難しい課題じゃない?
売れてる店舗の視察くらいしたいもんだわ。
たまに連絡を取り合ってる企画部の仲間に愚痴メールを送って
報告書は今日も真っ白のまま、パソコンの電源をおとした。
何か打開策でも思い付けば良いものの・・・
まだ人間関係の確立さえできてないこの状況では相談できる相手もいなくて難しい。
翌朝
出勤するなり鳴り響いた事務所の電話を受けて
私の顔色は真っ青になった。
『佐野さんですね。私、社長秘書の緒形と申します。
昨日の案件で連絡を差し上げました。』
電話口から聞こえる淡々とした女性の声に、私は意味が分からなくて、一瞬、挙動不審になり、辺りを見渡した。
「昨日の・・・案件?」
『はい、昨晩社長へ宛てられたあなたからの用件ですが・・・
社長から、今日一日店舗を閉めて、市内で売上トップの店舗の視察に従業員を揃えて行くように伝言を受けました。』
「えっ⁉
えっ⁉」
慌ててバッグから携帯を取りだし、昨晩のメールの送信先を確認した。
宛先は企画部の仲間なんかじゃなくて
まさかの社長へ誤送信。
叫び声を必死に飲み込んで、秘書との電話を切った。