釣り合わない!!~溺愛コンプレックス~
そんな私の気持ちを一番に理解してるのは、古株の先輩達。もちろん、部長もそうなのだ。
だからこそ、部長は私の顔色を伺って、一瞬、罪悪感に満ちた表情を見せたけれど、直ぐに私の目を見据えた。
「人事部からの命令だ。佐野は来週から駅前の店舗へ移動だ。」
「えっ・・・?」
あんまりの内容に言葉が詰まる。と、静まり返っていたオフィスにもどよめきが起こる。
無理もない・・・
それは確かに〃左遷〃と、捉えられる内容だったんだから・・・。
部長は「店長として行くんだ。現場で学ぶ栄転と思え」と、言ったけれど・・・
私にはなんの励ましの言葉にもならなかった。
企画した商品の仕事を最後まで成し遂げられないことと
なぜ、今このタイミングでの移動なのか・・・納得できなくて
目頭が熱くなるのを歯を食い縛って絶えた。
それが私の精一杯の強がりだった。
それから1週間、覇気もなく、流されるように色の無い時間があっという間に流れた最後の日の夕方
「本社で会議するときには顔を見せろよ。」なんて、きまずそうな仲間達の苦笑いを見ながら、オフィスを後にした。
けれど、直ぐにはこのビルから出ていく気持ちにもなれなくて、一人、ビルの立ち入り禁止の非常階段に座り込んで、煙草に火をつけた。