釣り合わない!!~溺愛コンプレックス~
苦い煙を深く吸い込んで、溜め息と共に吐き出すと
「ここ、立ち入り禁止だし禁煙」と。階段を下りてくる響君の声が聞こえた。
私はそんな彼を一度、振り返ったけれど。
静かに煙草を吸い続けた。
「彩葉ちゃん、遅い反抗期でも迎えた?こんなとこ、誰かに見られて上の人間にチクられたら、大変だよ?」
冗談混じりに優しく、くすくす笑いながら隣に座り、私の手から煙草を取ると、ポケットから取り出した携帯灰皿にそれを捨てた。
「なんだ。響君だって吸う人なんじゃん。いつも
ここで隠れて吸ってるの?」
顔も見ずにぶっきらぼうに返すと「違う違う。俺はビルの周りにたまに落ちてる煙草のゴミを捨てるのに携帯灰皿を持ってるだけ。
たまに場所を守らないで刷ってる奴がいるんだよ。」と、慌てて弁解して見せた。
「それって、私みたいな奴のことでしょ?」
勿論、入社して以来、職場に煙草をもってきたのは初めてだったから、これまで規則を破った事など一度もない。
「・・・煙草、体に悪いよ?」
「知ってる。ずーっと禁煙してたんだけどね。最近また、始めちゃった・・・」