釣り合わない!!~溺愛コンプレックス~
「・・・今回、私の企画が通ったのって・・・」
えこひいきするような人では無いだろうけど・・・
「それは違うよ。誤解しないで。
それに、初めてあの企画書を見たのは彩葉ちゃんと知り合う前だ。
あの企画を純粋に面白いと思ったから、推しただけ。
君の実力だよ。」
私の頭を優しく撫でる手。
こんな秘密にしておきたかったほどの、おんぼろアパートの一室で、スッピンで・・・
愛されてることを感じる幸せは、初めて知った事だった。
「どうして、清掃員の格好なんかして、会社の掃除なんかしてたのよ。
清掃員の響君が実は社長。なんて誰も気付かないよ。
しかも、普通に声かけてくるし・・・私なんて、仕事の愚痴まで言っちゃったじゃない・・・」
「あぁ・・・それはね。
うんまぁ・・・単なる気分転換?」
「気分・・転換・・・?」
偉い人の考えることは私にはよく分からない。
「響君って社長として、皆の前に姿を現さないから、よく、色んな噂がたってたんだよ。
私だって、勤めて9年だけど、まったく、これっぽっちも社長の情報を耳にしたことなんかなかったし。」
「うん。まぁ、この歳でこういうことを表だってやると色々、面倒事が多くてね。
それに、上層部の人間がちゃんと分かってたらそれでいいかなって。
それに・・・
俺が最初から社長として、彩葉ちゃんと出会ってたら、きっと君とこんな風になれなかった。
・・・そうでしょ?」
それはそうだ・・・
最初から知っていたら・・・
きっと響君と恋に落ちる事はなかった。