釣り合わない!!~溺愛コンプレックス~



緒方は元々、親父の秘書で、俺が大学に入学後、受け継ぐ事になったこの会社を手伝うようになってから、親父の意向で俺の秘書となった。

長いこと親父の秘書をしていた緒方がいるから、親父も僅か1年の期間で直ぐに俺に会社を継がせたのは、俺の力量よりも緒方がいる安心感からなのは、事実、感じていた。

そんな緒方からの提案もあり、一日のうち、少しの時間、社長という立場から会社の清掃員として違う一面で会社と関わるようになった初日の出来事だ。

普段通り、朝早く出社した俺は初めて着る作業着に、気楽な気持ちで、モップを持っていた。


誰もいないフロアの掃除をしながら、一番に来てこんなことしてる俺ってやっぱり、一番大変で、一番辛くて、他の社員ときたら、今ごろのんびり起きてるんだろうなぁ。なんて呑気に考えでいた。

そんな時、カツンカツンッとフロアに足音が響いて、誰も来ないと油断していた俺は、焦って物陰から足音の先に視線を送った。

そこには、疲れた顔をして、下を向いて歩く彩葉がいたんだ。


彼女は皆が出社する二時間も前に、会社へやってきた。


だけど、あんまり、朝いち疲れた顔をしている彼女に、正直やる気よりも、嫌々、此処へ足を運んでるようにしか感じられなかったんだ。

仕事のストレスで、こんなことしてる俺と似た者だな。なんて勝手に考えでいた。

彩葉の第一印象は〃仕事が辛いけど泣く泣く働いてる人。〃そんなイメージを勝手に持っていた。


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