釣り合わない!!~溺愛コンプレックス~
嫌なら辞めればいいのに。
やる気もない従業員にやる気のない社長としての俺。
彼女も俺も、この仕事には向いていない。
そんなことを心の中で呟いた。
だけど、翌日も彼女は誰よりも早く出社して来た。
今日はより一層、目の下のクマをハッキリとさせて、仕舞いに菓子パンを食べながらの出社だ。
「朝御飯くらい食べてきたら?」彼女の姿があんまりなので、思わず呆れて声をかけてしまった。
すると彼女も、まだ誰もいないと油断していたのか、俺を見るなり慌てて、食べかけの菓子パンを後ろ手に隠してて、照れ隠しのように笑った。
「こんな朝早くからお掃除?大変ね。」
一見、大変なのはどう見ても俺より彼女のほうだ。
「昨日も早くから来てたよね?何のためにこんな早くから来てるの?朝の時間外手当てって高いの?」
少し皮肉だっだだろうか。
彼女は気付かない様子で、突然、さっきとは打って変わって、白い歯を見せて笑ったんだ。
「まさか。残念ながら朝の時間外手当てはでないんです。
私が来たくて来てるのよ」
正直、そんな言葉がでてくるなんて思ってもみなかった俺は、ただ、けらけら笑う彼女に素直に驚いた。
こんなに疲れた顔をしながら「来たくて来てる。」なんて調子が良い。
それでも彼女は今、企画してる自分の仕事の話を、きらきらと降り注ぐ星屑を数えるように、目をキラキラ輝かせて語ったんだ。
俺はそんな彼女の話に吸い込まれるように夢中で聞いていた。
「つい、話し込んじゃった。お仕事中にごめんなさいね。」と、足早にエレベーターに乗っていなくなったその後も、彼女の眩しい笑顔が瞼に焼き付いて離れなかった。