社長は今日も私にだけ意地悪。
「そうか……でも無理はするなよ」

「はい」

私がそう答えるとにこっと笑う社長の笑顔に、心の全てを持っていかれそうになる。


そして……先程の社長の言葉が頭の中で何度も何度も繰り返される。


『絶対に離さない。必ず俺のものにする』


『君にーー俺のことを好きにさせてみせる』


その告白が、とても嬉しい。


社長は、これからは美咲さんではなく私のことを選んでくれるって……そう捉えていいんだよね。

浮気じゃなく、私だけを真っ直ぐに見てくれるのならば、これ以上彼を拒む理由はないと思う……私も彼のことが好きなのだから。


……でも。



「社長」

私が口を開くと、彼は小首を傾げて「ん?」と答えながら、優しい視線を私に向ける。


大好き。この表情が……ううん、社長の全てが。


「私も社長のことが……好きなんです。あなたと一緒にいると胸がドキドキしてたまらなくなります」

「芽衣……」

「でも!」


先日の佐藤さんからの言葉をゆっくりと思い出す。


『お前がやるべきことはたくさんあるだろ』


そう。

今、私が意識するのはーー社長じゃない。



「私、今はーー社長のことよりも頭がいっぱいな男の子が、四人もいるんです!」


行かなきゃ。RED searchの元に。
今日は彼等のこれからの人生を左右する勝負の日なんだ。

私はおにぎりを全て口の中に含むと、ソファから降りた。

ご飯を食べて少し休んだら大分体調は回復した。


「社長、ご馳走さまでした! 美咲さんにもよろしくお伝えください!」

「お、おい。芽衣ーー」

勢い良く頭を下げ、私は社長室を飛び出した。良かった、今ならまだ間に合う!


今はまだ、社長と両想いになって浮かれている場合じゃない。

もしその間に、社長がやっぱり美咲さんの元へ戻ってしまったとしても……


私は後悔はしない。
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