社長は今日も私にだけ意地悪。
観客席からはざわめきが聞こえる。
直接的なブーイングこそないものの、観客の不満はわかりやすく目に見えた。というのも、観客には来場時に演出用のペンライトが渡され、アーティストが登場するのと同時にペンライトを点けるのが観覧のルールとなっている。

……なのに、ペンライトは殆ど点いていない。


私の心は再び不安に襲われる。


ステージに立った木崎さんが、小さく深呼吸するのがわかる。


歓迎されずにあの場に立つことは、私の想像以上に怖いことだと思う。
四人も、ペンライトが輝かないこの暗闇の中で、きっと恐怖を感じている……


そう思ったのに。


離れた場所にいる木崎さんが、スタンドマイクの前で楽しそうに笑ったのがわかった。


そして。


木崎さんの歌声を合図に始まる一曲目。


会場が、震える。
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