社長は今日も私にだけ意地悪。
何だろう、この展開。思わず携帯を出してしまうと、社長が「お前に電話番号教えても電話してこなかったからな。お前のIDを俺に教えろ」と言ってくる。


「え、いやでも……」

「早くしろ」

凄く強引で、断ることが出来ないことはよく分かる。
観念してIDを教えると、社長はすぐに自分の携帯にそれを打ち込む。
そして私の携帯に、片手を挙げながらウインクしている可愛いネコのスタンプが送られてきた。スタンプには【お疲れにゃん】という書き文字がされている。
送り主は【星崎 圭】。目の前にいる社長だ。


「ちゃんと届いたか?」

「届い……てないかもしれません。社長がこんなに可愛いスタンプを送ってくるとは思えません」

「ちゃんと届いたみたいだな」

社長は満足気に笑うと、今度はタクシー会社に電話を掛け始める。
電話を切った彼に「では私はこれで失礼します」と頭を下げると、「馬鹿。送ってくに決まってるだろ」と言われる。


「え、いえ、電車で帰りますから……!」

「何でだよ。素直に甘えろ」

すぐにやって来たタクシーに、社長は私のことを詰め込むかのように背中を押し、無理やり乗り込ませた。


「じゃあな。また明日」

そう言うと、私の右手にやはり無理やり何かを持たせ、運転手さんに合図して扉を閉めさせた。

私だけを後部座席に乗せたタクシーが走り出す。

さっき私は何を持たされたんだろうと思い、右手に持っていたそれを見てみると、タクシーチケットだった。

……どうやって使うんだろ、これ。


……食事とかタクシーとか、ここまでしてもらっておきながらこんなことを思うのは非常に失礼だけれど、私、社長に振り回されてる。
こんなに胸がドキドキするのはきっと、慣れない展開ばかりが続いて身体が疲れているから。そうに決まっている……。
< 42 / 154 >

この作品をシェア

pagetop