キミはずっと、かけがえない人



「へぇ、キスだけでコレか。先が楽しみだな」



床に座り込んでしまった私の前にしゃがみ込み、ニヤリとしながら言う。

どうやら、腰くだけになってしまったらしい。

久しぶりだからなのか、彼のテクニックなのかよく分からないけど。

イヤ、そんなこと知りたくもないけど。

しかも、先が楽しみって何だ。

先なんて何もないのに。



「気づいてない?ここに、一緒に住むんだけど?」

「……は?」



イヤイヤ、冗談だよね。

確かに、1人で住むには広すぎるところだけど。

でも、まさか一緒に住むなんて。

外堀から埋めるつもりか。



「既成事実を作るんだよ」

「え?」



既成事実ってまさか、子供でも作るつもりか。

何でそこまでする?

でも、さっきまでの様子からにして、ありえる話しだ。

諦めて、ここに住むのは間違っている気がする。

やっぱり、逃げたい。




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