キミはずっと、かけがえない人



「逃げられる訳ないから、諦めろ」



にっこり笑って言われるけど、その笑顔が怖いんです。



「そういう訳で、寝ようか」



そう言って、私を立たせる。

それから、私の手を引いて歩き出す。



「え?どこへ行くの?」

「どこって、2人の寝室だけど?」

「……2人の?」

「一緒に住むのに、寝室が別な訳ないだろ」

「はぁー⁉嫌だよっ。何で一緒に寝なきゃいけないの」

「だから、既成事実だって」



イヤイヤ、だから何でそんなに乗り気なんだよ。

意味が分からない。

私のこと好きな訳ないのに、何で。



「とりあえず、文句言っても仕方ないし。今日は手を出さない。だから、寝ようか」



何かを言う前に、ベッドに連れ込まれる。

しかも、手を出さないとはいえ、私を抱き締めている。

逃げられないようにするためか。

その前に、寝られないって。

いくら好きじゃないと言っても、異性に違いはない。

これだけ密着されれば、ドキドキしてしまう。

明日も仕事なのに、結局なかなか寝付けずに夜を明かした。




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