キミはずっと、かけがえない人
3rd*わがままな自由



朝になっても、寝た気はしなかった。

目を閉じても、全然眠れなかった。

かたや、彼はぐっすり眠っている。

図太い神経してるわ。


起き上がろうと少し動くと、抱きしめたままの彼の手に力が入る。

ぎょっとして振り返ると、彼が目を開けてこっちを見ていた。


嫌な予感はしたものの、朝はすんなり離してくれた。

ダイニングへ行くと、朝食が用意されていた。

ここは、寝ている間に勝手に人が出入りするらしい。

お手伝いさんでもいるのだろうか。

ここの家の仕組みがよく分からない。

分からないけど、彼と向かい合ってご飯を食べた。


そして、押し問答の末、彼に会社まで送られた。

昨日駐車場で拉致されたため、車は会社に置きっぱなしなのだ。

それでも、送られるのは嫌だからタクシーで行くって言ったのに、彼はそれを許さない。

始業時間は大きく変わらないだろう。

私を送る方が手間だと思う。

むしろ、遅刻するんじゃないのか?




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