彼と愛のレベル上げ



「結納をきちんとするのは日を改めないといけないが、婚約ぐらいはできるだろう?」

「そ、そうだけど」

「それをしないうちは東京への異動も堂地君との同居も許可しない」


結婚の話が出てからというもの、お父さんは色々と無理難題を押しつけてくる。

今回の修行の話だって……


「そうと決まれば、堂地さんに連絡してね?桃華ちゃん」

「あ、あのっ、婚約すれば東京行きも許してくれるの?」


お母さんに言われたようにジュンさんにも早く伝えないといけないけれど、お父さんにもう一度だけ確認しておきたい。


「許すも何も、桃華が決めたんだろう?」

「そう、だけど……」


だけど、やっぱり両親には手放しで送りだして欲しいから。


「自分で決めたのなら、その二つもクリアできるんじゃないのか?」

「…わかった」


要するに、決めた事は何としてでも実行しろと言いたいんだろう。

いつも優しいお父さんだけど、やっぱり人生の岐路に立った時は間違った選択をしないように導いてくれようとしている。

そんな父親の厳しさを優しさを感じながら返事をした。


「ちょっと自分の部屋で電話、してくるね」

「桃華、ここでしなさい」

「え?」


ジュンさんと色々と打ち合わせもしたいし、ここではなんとなく話しづらい。


「話しがあるから、代わって欲しい」


出なければいいなと思いながらもジュンさんの番号を選ぶ。

そんな私の願いもむなしくワンコールで出るジュンさん。


『モモ?』

「あの、今大丈夫ですか?」

『はい、今実家ですか?』

「両親に話をした所なんですが……」


チラチラとお父さんを見ながら話をはじめた私にお父さんが


「代わりなさい」

「あ、あの、お父さんがジュンさんに代わって欲しいそうなので代わりますね?」

『モモ?』


私を呼ぶ声が聞こえたけど、そのまま携帯電話をお父さんに渡す。

だってなんて切りだしていいのか。

一通り挨拶をするとお父さんがそのままさっきの話をしだした。

ジュンさんは言葉短に反応をしているようでお父さんがずっとしゃべっているかのように感じる。
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