彼と愛のレベル上げ
荷物を中に入れて主任は私に問いただすように聞く。


「それで?どうやったら会社からここまでこんなに時間がかけられるんですか?」

「えと、あの……」


考え事をしながら電車に乗っていたら乗り換えの場所を通り過ぎてて、慌てて降りて反対車線に乗ったらそれが違う路線だったとか。
あり得ない、よね。


「ともかく、アヤノと八時に店で待ち合わせをしているので急ぎましょうか」

「…はい。すみません」

「大方、乗り換えの駅を間違って違う電車にでも乗ったのでしょう?」


ば、ばれてる。
て言うか、見てました?主任?


「…はい、その通りです」

「では、迷子にならないように手を繋がないといけないですね」


また迷子防止、なの?


「え、」

「仕事が終わったんですから別にかまいませんよね?」

「あ、」


主任に手を取られてしっかりと握られてしまう。


「それに、嫌だって言っても離しませんけどね?」


今度は意地悪そうに口角を少し上げて微笑む。

ついこの前まではこの表情を知ってるのは私だけだなんて思ってたのに、もしかしたらこれも……


「モモ?どうしました?」

「え、」

「何を考えていたんですか?」


何を。
まさか主任の事とは言えずに戸惑う。


「あー、今日の勉強会でちょっと疲れちゃったみたいで」

「ではアヤノと会うのはやめますか?」

「いえ、あのっ大丈夫です、から」


大丈夫。
さっきだって、心配してくれてたのに。
それなのに私は主任の事、


「では、いきますよ。電車に乗ったらモモがアヤノにメールしてください」

「私がですか?」

「モモから遅刻の理由を聞けば怒らないと思いますから」


主任から聞いても怒らないと思うんだけどな。
だけどアヤノさん、主任には少し厳しいっていうか…
やっぱり大学時代なんかあったのかな?


「わかりました」そう返事をして、あとで主任のいる前でアヤノさんに聞いてみようと思った
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