エリート社長の許嫁 ~甘くとろける愛の日々~
いち早くお礼を言うべきだったのに、稲田さんの訪問で忘れていた。


「俺は聞いたことを伝えただけさ。砂羽が頑張ったんだよ」


彼はにっこり笑いながら近づいてきて、私を腕の中に閉じ込める。

恥ずかしさに鼓動が速まってしまうけれど、彼の優しさがうれしくて私も背中に手を回してしがみつく。


「だけど、役に立ったなら、ご褒美が欲しいな」
「ご褒美?」


彼ならなんでも手に入るでしょ? 
なにが欲しいの?

なにかわからず疑問を抱いていると、彼は手の力を緩め、私の顔を覗き込む。


「うん。砂羽からキスして?」
「えっ!」


私からキス? 
そんなの、卒倒しそうだ。


「なぁ、いいだろ?」


突然甘えたような声を出す彼からは、スーツを身に纏っているときの凛々しさが消えている。


「で、でも……」


なにせ人生初のキスだって、ついこの前だったわけで。
いきなり上がったハードルにたじろいでしまう。
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